今回は一休みして「かっぽう着」の話です。皆さんもご存じのように万能細胞「STAP細胞」を開発した小保方晴子さんが研究時に愛用する白いかっぽう着がにわかに脚光を浴びています。
小保方さんが研究時に愛用する姿が報じられて注目が集まったほか、テレビドラマや映画にも登場。近頃は身に着ける人も少なくなっていたが、東京巣鴨のある着物専門店の社長は、「最近、白いかっぽう着ありますか」という問い合わせが増えてきたそうです。これも小保方さんの影響でしょうと。
かっぽう着は、日本人の服装が和服から洋服に大きく移行する高度成長を境に、需要が減っていったそうです。同店でもここ数年間かは、かっぽう着を買っていくのは月に数人であったのが、小保方さんのニュースが報じられた以降、一日に二、三着売れるようになり、普段、着物を着ない人も買ってくれているそうです。かっぽう着は、はやり腐りがなく、長い間着られる和装そのものの良さが見直されてきたのではと期待を込めいます。
インターネット通販サイトの「楽天市場」でも同様の影響が出ています。「かっぽう着」を扱う約500店の一日当たりの総注文数は、以前に比べて二~三倍に。「かっぽう着はもともと母の日の贈り物として一定の人気があるが、その時期と同じくらいの需要」だとか。
小保方さんのニュースに限らず、かっぽう着を目にする機会は増えています。大正から昭和にかけての大阪や東京を舞台にしたNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」では、ヒロインがかっぽう着を着用しているシーンが頻繁に登場。その他、昭和初期が時代設定の映画にも、かっぽう着姿の女中が重要な役で出ています。
かっぽう着の歴史は古く、明治時代にさかのぼります(明治37年)。東京の赤堀料理学園を開校した赤堀峯吉が初めて使ったとの記録が残っているそうです。当時、料理教室に通えたのは上流階級の女性たち。外出ともなれば、着飾った晴れ姿でやってくる。それを汚すことなく、活動的に動き回れる格好はないかと考え、かっぽう着が生まれたといいます。
小保方さんは会見で「おばあちゃんに応援してもらっているような気がするから」と着用の理由を説明し、祖母からの贈り物であることを明かしました。実際、かっぽう着を使っているのはお年寄りが多く、関係者の間には購買層が広がってほしいとの思いもあるようです。
老舗メーカーでは「かっぽう着はどうしてもおばあちゃんが着るもの」というイメージが強い。これを機に若い人にも良さを知ってもらい、使ってもらえるようになればありがたいですね」と。かっぽう着には「よし」と気持ちを奮い立たせる何かがある気がします。女性たちはそうやって、一人の主婦に、母親に、徹してきたのでしょう。その白には理屈でない正しさと、強さがあるように思えます。確かに新鮮みがあって清潔感も感じられますね。