最近の景気論調で、個人消費はアベノミクス効果で好調とか、消費増税引き上げ? 取りやめ?という記事が毎日のように新聞に載っている。確かに国内総生産(GDP)の統計でも個人消費は最近急に改善したのではなく、ここしばらくずっと底堅かったのだそうで、足元の個人消費が好調なのはエコポイント、エコカー補助金終了に伴う一時的な減速が終わる頃に、アベノミクス効果が上乗せされた結果とみるべきだろうという専門家も多い。
 では、その個人消費の基調的な強さの背景は何かというと、一つの見方が人口構成の変化が主な要因だ。団塊世代の本格退職は、高齢者消費の活発化を促している。以前は高齢者の潜在需要をつかみ切れず、なかなか売上につなげられなかったが、例えば高齢者のコンビニエンストア利用が目立って増えているように、最近になり供給サイドもシルバー需要の開拓に手応えを感じつつあるように見える。また、労働供給が少しづつ減っている中で、低成長でも手堅く推移していることが人々の安心感につながっているのかも知れない。事実わが国の失業率は3%台と、先進国の中では突出して低い水準にある。

  もう一方で、ここ数年の放漫財政に原因を求める議論もある。民主党政権は自民党とは違った形での財政支出(バラマキ政策)が個人所得の源泉になってきたという議論だ。

 さて、安部総理はつい最近「景気は順調に上げってきている」と記者団に語ったが、消費税率引き上げについてはコメントを避けた。先日政府が60人の有識者・専門家から意見を聞く集中点検会合を設けたのは、安部総理が消費増税の最終判断にあたり、熟慮の姿勢を演出する狙いがある。増税の是非は暮らしや企業活動に直結するだけでなく、今のところ高支持率を保っている政権を揺るがしかねない。
 総理周辺は「集中点検会合で方向性が決まることはない」と解説している。集中的点検会合の結果を踏まえて総理の判断の参考にしたい意向のようだ。この会合では、政府側の出席者は聞き役に徹し、質問は一切しなかったという。
 消費税率を引き上げることの最大の意義は、財政の健全化を進めること。国の借金残高は(国債・借入金等)は6月末で初めて1000兆円を超えた。これは先進国でも最悪らしい。もう気が遠くなる数字、日本はこの先どうなるのか心配だ。この財政を圧迫する最大の要因は社会保障費の増加。急速な少子高齢化の進展で、年金、医療費など社会保障費は年1兆円規模で増加している。
 消費税増税法では、景気が悪化している場合は引き上げを見送る「景気条項」があり、10年間の平均で名目3%、実質2%以上の経済成長を目指すとしている。
 個人消費=アベノミクス効果。と、原因と結果を性急に結びつけないで、その背景をしっかり議論することが肝要である。
 日本経済に消費税増税のリスクに耐える力強さがあるかどうかが問われている。 最後に、2020年夏季五輪の東京誘致が実現すれば、景気浮揚効果で増税は可能という見方が浮上している。(五輪開催地決定日は9月7日・日本時間8日午前5時)