金融庁は、中小企業向け融資や個人向け住宅ローンの返済条件を緩和する「中小企業金融円滑法」について、2012年3月まで1年間期限を延長すると発表した。
中小企業が返済猶予に慣れてしまう問題点も指摘されたが、円高の影響もあって、中小企業の資金繰りは依然厳しく不透明感が強く「中小企業の業況は引き続き厳しい」と判断したものと思われる。
倒産防止に一定の効果をあげていると見られるが、一方で「一時しのぎ」の企業延命に過ぎず、金融機関の潜在的な不良債権を膨らませているとの批判も根強い。不良債権に分類されるべき債権が正常先となり、本来必要な引当金が積まれていないため、「将来、同法がなくなった時に、一気に多額の引当金を求められる可能性がある」という。
延長に伴い、金融庁は、同法を適用した企業に対し、金融機関がよりコンサルティング機能を発揮し、早い段階での経営改善指導を行うよう検査指針を改訂するほか、返済条件緩和の実施状況等を簡素化し、負担を軽減する方針というが、はたして金融機関がコンサルティング機能を十分発揮して、企業の経営改善が着実に図られ、返済能力の改善につながるという流れが定着させられるかが問題だ。やはり根底には、一旦返済猶予を申請してしまうと、その企業に対して金融機関が新規の融資を行わなくなる事も懸念材料である(現状はほとんど無理である)。ある大手行関係者は、「経済・金融政策に手詰まり感ある中で、数年単位の延長もあり得る」と、返済猶予の長期化に懸念を示している。
金融機関にとっては、将来の不良債権増加につながりかねない措置だが、経済の先行き不安感が根強い中、資金繰りが厳しい中小企業や個人を手助けすることが出来るのか?と冷静に受け止める声も多いとか。