政府は11月20日の閣議後会見で、「日本経済はデフレ状況にある」との認識を表明した。デフレとは‥物価が持続的に下落していく経済現象である。物価が下がるのだから人々の暮らしはよくなるのではないか。そう考える人も多いだろう。
このデフレも、全ての物価が一律に下がっているのではない。690円のジーンズ、15円コーラーなど過激さを増す安売り競争もあるが、例えば、預金・現金・住宅ローンといった金融資産・借金といったものは、価値が下がらない。持てる人と持たざる人との差が広がる恐れがある。資産を持っている人は物が安くなった恩恵を受けるかも知れないが、借金を抱える人は返済額が実質的に膨らむし、雇用が安定しない人は賃下げや失業の恐れに直面する可能性が高い、そうすると運よくリストラされなかった人達も、リストラの恐怖で消費を控えてしまう。
賃金は、デフレだからといってほとんど下がっていない。物価下落で消費者は買い物はしやすくなる。だが、企業にとっては売り上げが減り収益が圧迫される。新規の設備投資は出来ず、倒産も増える。労働者の賃金は下がり、失業も増える。その結果、更に消費が落ち込んで物価が下がれば、景気後退(不景気)とデフレが連鎖に陥り、需要は落ち込み、企業は減益減収となり不景気が一層深刻になってしまう。政府にとっても税収が減る要因になることから、経済は大変厳しい状態となる。
対策としては、金融政策が採用される事が多いが(政策金利や公定歩合・外為等)、なかには経済構造そのものを改善する努力が必要という人いる。OECD(経済協力開発機構)のエルメスコフ氏は「日本については、早期にデフレから脱出できるとは見ていない。つまり、今年は全くその可能性はなく、おそらく来年も難しいだろう」と述べた。また、ある人は、「今必要な政策はインフレ政策ではなく、量的緩和によってデフレを克服する目的は、デフレによって失われた価格調整機能を取り戻すことである」と述べている。
国民生活を脅かしかねない事態に真剣に対処して、デフレの深刻化を食い止めてほしいものだ。又、一時ドルが84円台まで上がった円相場や、9,000円割れ近くにまで下落した日経平均株価が、輸出を中心とした日本経済に悪影響を及ぼすことのないよう、円高・株価対策も重要である。