ジーパン

新しくジーンズを買うと、一緒に風呂に入る。デッキブラシとたわしを使って色を落とす。

漂白剤を使って色を落とすのはいかにも不自然だから使わない。

失敗してまだらになると格好悪い。

高校生のころ、ジーンズはそう何本も簡単に買えるものでは無かった、

しかし買ったばかりのものはインディゴブルー鮮やかにゴアゴアの新品です。というのがイヤで、先ずは洗うことが最初であった。

大学生の頃は毎日がジーンズであるから、2,3本のジーンズを洗い廻しはいても、色落ちするのは早く、股や膝のあたりはすり切れて破れてしまう。

夏場はそんなところに布テープを貼ってバイクにまたがったものである、

ジーンズに愛着が湧いてくると、いろいろなこだわりが出てくる、形だけでなく、色合いに対しても。

今思えば笑ってしまうほどこだわりをもってはいていたのかもしれない。

今はいろいろな加工を施す。長年はいた風合いや、ものによっては芸術作品の様な雰囲気を醸し出すものまで、単なるダメージやウオッシュ、ブラストだけでは無い表情豊かなものまで作られている。

新しいものに加工を施し、穴を開けて全く違ったものとして売り出されている。

時間を掛けてお気に入りの一本をはくというよりも、気に入った1本を探して買い求めるという事だろうか。

現代は、ジーンズに限らず、あまりにも結果を早く求めすぎる傾向にありやしないか?

ジーンズ一本にそこまでこだわって洗濯をする人もいないだろう。

しかし、何もそこまで急いで結果を求めなくても、のんびりと、ゆったりと楽しみながら流れていく事があってもいいのではないか。

一度や二度の失敗でなどと軽々しく言うつもりはないが、何をそんなに急いで、どこへ行こうというのか。

今は、たるんだ下っ腹に力を入れて、メタボでジーンズを上手くはきこなせないこの体型にこだわり、格好良いはきこなしが出来る様にしたいものである。

【川中洋一】