2009年03月編 川中清司

『相手を生かして話す』
 

現代人は自分の意見をはっきり述べることが、大事とされています。
しかし、自己主張が強すぎると、たとえ正論であっても聞き入れてもらえず、却って反感だけが
残ることも多いようです。

坂本竜馬は、「言い合いになったら負けてやれ」と言ったそうです。
「勝って反感をかうより負けちゃれ、その方が理解が深まるけん」。
清濁あわせ飲む太っ腹が、目に見えるようですね。

言うべきことを言わないで、その場の空気に巻かれろというのではありません。

話し上図は聞き上図。案外、聞き手に回った方がうまく運ぶこともある。
要は、いつ、どういう風に言うか。よく考えて話すことでしょう。こんな川柳もあります。
「正論が 通って酒が まずくなり」。
 相手の心を理解する
  
言葉は「ことだま」と言われ、一旦、口からでると魂が入って、まるで生きているように動き出します。
口は禍のもとです。法華経にも「悪業は舌根より生ず」と説かれています。
聞き手の立場や感情を配慮して話すことが必要でしょう。
人の話が終わらないうちに、先走ってこっちの意見を言う。
知ったかぶりや、悟ったような話し方をする。
口をとがらして、不平不満をぶちまける。
こうしたことは止めたいものです。
 

良寛和尚の戒め
良寛和尚の「一口戒語」に、こんなことが書かれています。
 

・自らを戒める事
・己を誇らず一生乞食
・人をみて自らをいましめたい
・口を尖らせてものを言う
・不足不満の感情あらわにむきだす
・そのことを果たさぬうちい次ぎのことを言う
・人のもの言ひ終わらぬうちにもの言う
・推しは測りのことをまことしやかに言う
・見てきたようにしったかぶり
・唐ことばを好みて使う
・学者くさき話し、悟りくさき話し
・本当に悟った人はそぶりをみせない
  良寛和尚は、人に聞かせるのではなく、自分の戒めとして、これを書かれたものです。
  わたし自身、大いに反省させられものがあります。
 

 【川中 清司】