これから始める与信管理

 

1.与信管理に関する基礎知識

 

信用リスクとは?

 

会社における「リスク」にはどのようなものがあるでしょうか?

災害によるリスク、為替リスク、カントリーリスク、オペレーショナルリスク、

そしてもう一つ大きなリスクが「信用リスク」です。

これは取引先が倒産して、売上債権の全額が回収できなくなって、

損失を出してしまうことをいいます。

 

たとえば、

部品メーカーA社には大口取引先の電機メーカーB社があります。

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このB社が倒産した場合には、

売上債権5千万円が損失となりますので、

A社の利益が0円になってしまいます。

この5千万円の利益を補填するためには、

売上を10億円増やす必要があるのです。

 

では、

もっと取引量が少ない、工作機器メーカーC社の場合はどうでしょう。

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このC社が倒産した場合にも、

損失となった売上債権500万円を補填するためには、

売上が1,000万円必要となるのです。

また、リスクは以下の3つの要素から成り立っています。

◆どれくらいの期間の中で

◆どのくらいの割合で発生し

◆どれくらいの損失を出すのか

 

取引先のD社は、

「資金繰りが厳しくなっていて、あと1年ぐらいで、倒産する可能性が高いな。

当社が売っているのは毎月少しだけど、

支払いが遅れているから2ヶ月分がたまっている。大丈夫かなあ」

と、こんな感じになります。

まずは、それぞれの取引先が、

どれくらい倒産する可能性が高いか低いかを把握することと、

売上債権残高を常に把握しておくことが、最初の一歩であり、重要となります。

 

 

与信とは? 与信管理とは?

 

それでは、危ない会社と、安全な会社、どのように対応すれば良いのでしょうか?

ひとつは、取引をする、しないです。

しかしながら、簡単に取引を止めるわけにはいきません。

取引を止めたことで、売上が減って利益がなくなるかもしれませんし、

様々な事情があって止められないかもしれません。

現実には、危ない会社といっても、いろいろな段階に分かれます。

ぎりぎりのところで取引をしている相手に対しては、

大きな損失を出す可能性を抱えてしまいます。

 

 

そこで考えられる有効な方法が「与信管理」です。

ここで出てくる「与信」とは、

一般的に、「商取引において取引相手に信用を供与すること」を指します。

たとえば、商品を販売する場合、

商品を先に渡して代金は後で回収することが往々にしてあります。

この取引において、販売先に対して代金を回収するまで

「信用を与える」ことを「与信」といいます。

 

 

この信用を与える間の売上債権を管理することを「与信管理」といい、

取引先の危なさの状態に応じて、取引可否や取引の規模を考える方法です。

 

取引先が倒産した場合、

具体的な損失となるのは、売掛金や手形などの売上債権ですから、

この残高をコントロールするのです。

 

安全な会社に対しては、この売上債権残高の信用枠を大きく取り、

危ない会社に対しては、この信用枠を小さくする、という考えです。

また、相手の企業規模なども考えて、その信用枠を調整します。

 

取引先のリスクを管理する時には、

この「与信管理」という管理方法が最も簡単であり、

効果も大きいので、実務では幅広く採用されています。

 

次回は、具体的な与信管理とは?

以上