2010年09月編 川中洋一

リーマンショック以来個人消費が落ち込み、なかなかデフレから脱却できない日本であるが、
経済が外需に頼らないブラジルでは回復が早かったようである。

ブラジルは豊富な天然資源を有しており、鉄鉱石の埋蔵量は
世界全体の約25%を占めると推測されている。
鉄鉱石の輸出は世界一、アルミニウムの輸出量は世界二位で、世界的な鉱産資源の不足による
鉄鉱石の価格高騰が近年の高成長を支えている。
また原油自給率は約93%と「石油をほぼ自給自足できる」体制にあり原油高騰が経済に影響を及ぼしにくい。くわえて食料もほぼ自給自足が可能で穀物自給率は約90%、食肉自給率は100%をはるかに超えている。
 

そんなブラジルは、1999年8月に通貨危機が起こりスーパーインフレに見舞われ、
2005年までIMF(国際通貨基金)の金融支援を受けた。

その時の生活習慣が未だに残っている。給与は月に2回に分けて支給される。
肉や野菜などの食料品、日用必需品の購入も分割払いやクレジットカーによる
分割払いを利用して購入するケースが多い。
分割払いの金利無料キャンペーンや様々な支払いのオプションが準備され、
たとえば1,500円程度の紙おむつが3回の分割支払いの金利手数料無料で購入できる。

給料が出たらその足で欲しい物を手に入れに行かないと、今日買える物でも、
明日は買えなくなる。物を先に手に入れて支払いは後、
物価が上がる前に手に入れる為の分割払いが好んで選択された。
インフレが収まった今では、その必要性は低くなったものの、
商品を分割払いで購入する消費行動が習慣化している。
その為、実際の収入よりも購買力が大きく表れている。
貯蓄もしない、投資に回すという習慣もその時根付いたものである。

外需だよりの日本では、経済回復が急務であり、財政再建の前提条件であるが
そこには日本の得意とする分野を推し進めていく国家プロジェクトが必要だと思う。

【川中洋一】